ADHDの治療薬について
このページでは、ADHDの治療薬について、診療中に説明している内容をまとめてみました。
分かりやすく説明するため、私見を含めた内容としています。
ADHD治療薬とは
ADHDに対して保険適応のある薬は、2022年5月現在、下に挙げる4つです(日本で発売された順)。
- メチルフェニデート(コンサータ®)
- アトモキセチン(ストラテラ®)
- グアンファシン(インチュニブ®)
- リスデキサンフェタミンメシル酸塩(ビバンセ®)
いずれも、神経伝達物質であるドパミンやノルアドレナリンの分泌、作用に影響します。
ADHDの説明でも触れましたが、ADHDはこれら神経伝達物質の分泌のコントロールが苦手な状態と考えられます。
必要な時に分泌されない ⇒ 集中できない、注意散漫になる。
不要な時に分泌されてしまう ⇒ 過集中になる、声かけても聞こえない。
そのため、ADHD治療薬は、神経伝達物質の量を保ったり、作用を促進したりすることで、ADHD症状を軽減すると言えます。
各薬剤の特徴
メチルフェニデート(コンサータ®)と
リスデキサンフェタミンメシル酸塩(ビバンセ®)
こちらの2剤は、メリット、デメリットともに、よく似ているので一緒に説明します。
特徴①:朝1回内服する。効果は約10時間持続。
特徴②:内服効果が分かりやすい。効果が切れるのも分かりやすい。
特徴③:効果持続中は、食欲低下、不眠、といった副作用が出やすい。
朝7時に飲むと、夕方5時くらいまで効果が持続するので、学校での困り感が強い方の第一選択としています。
効果と共に、副作用もはっきり出ることが多いですが、ほとんどの方の場合、半日で効果が切れて、副作用も消失します。
そのため、副作用が強くて続けられない場合は、翌日から飲まずに次回の外来に来てください、とお声がけしています。
コンサータは錠剤、ビバンセはカプセルで、大体同じくらいの大きさです。
これまで錠剤を飲んだことのない小学1年生でも、案外飲めることが多い印象です。
アトモキセチン(ストラテラ®)
特徴①:朝夕2回内服する。効果は丸一日持続。
特徴②:1週間ずつ、4~5段階かけて増量するので、効果が出るまで1カ月かかる。
特徴③:食欲低下、腹痛などの副作用が出やすいが、改善することも多い。
特徴⓸:カプセル・錠剤の他に、シロップの剤型がある(ADHD治療薬で唯一)。
丸一日効果が持続するので、学校と家の両方で困り感が強い方に飲んでいただくことが多い薬剤です。
効果が出るのに時間がかかるので、1か月は飲んでみましょうとお話ししています(効果が出るのが早い方もいます)。
副作用は比較的軽度です。
グアンファシン(インチュニブ®)
特徴①:1日1回の内服で、効果は丸一日持続。
特徴②:眠気の副作用が出やすいが、慣れてくる方も多い。
丸一日効果が持続するので、学校と家の両方で困り感が強い方に飲んでいただくことが多い薬剤です。
アトモキセチンほど効果が出るのに時間はかからず、効果は分かりやすい印象です。
副作用の眠気は、飲み初めに強く出ることがあるため、
慣れてくるまで2週間から1か月は眠くなっても飲んでみましょう、とお話しすることがあります。
また、夕から夜に内服いただくことで、夜眠りやすく、日中の眠気が軽減することがあります。
ADHD治療薬の選択
ADHD治療薬にはそれぞれの特徴(メリットとデメリット)があります。
上記の内容をご説明した上で、内服する本人の状態(困っている場所や時間、副作用の出やすさなど)を考慮し、どの薬剤を試すのがよいか、をお話ししています。
そして、まずはお試しとして内服してもらい、本人やご家族、学校の先生に効果と副作用などを確認し、続けた方がよい場合は継続していきます。
もし薬剤が合わない場合は、他の治療薬を試すこともできます。
参考文献
各薬剤の添付文書