ADHDと二次障害
ADHDを治療するのは、多動・衝動性や不注意による、本人や周囲の困り感を減らすため。
確かに短期的には重要な目標です。
ただ、もっと長期的な視点では、二次障害を防ぐこと。これが非常に重要な目標となります。
ADHDの説明ページでは、ADHDの症状として以下の例を挙げました。
多動・衝動性
ちょろちょろしている、常に動き回っている、落ち着きがない、待てない、突然動き出す
迷子になりやすい、車道に飛び出す、どこに行くか分からない
不注意
忘れ物や落とし物が多い、ぼーっとしている、いろんなことに注意が向いてしまう、集中力がない
これらは、親御さんや学校の先生など周囲の大人から聞く、一般的なADHDの症状です。
一方で、比較的年長のお子さんから症状をうまく聞き出せたとき、こんなことをおっしゃいます。
どうしても体を動かしたくなってしまう、動きたい気持ちを抑えるのが大変、気づいたら動いてた(結果、怒られていた)
やらなきゃいけないのは分かっているのにどうしても集中できない
他のことを考えてしまい、気づいたら授業が進んでいた
覚えておかなきゃと思っていても忘れてしまい、いつも後悔する
共通するのは、自分では頑張っているけどなかなかうまくいかない、ということです。
そして、結果として怒られたり、後悔したり。
たまに失敗することは誰でもあります。でも、毎日失敗が続いてしまうと自分に自信がなくなるのは当然です。
特に、その失敗を指摘され続けられる場合はなおさらです。
二次障害
そして、あまりに失敗体験を繰り返すと、”二次障害” を生じ、より日常生活が難しくなります。
二次障害には、抑うつや不安、暴力や反社会的行動、不登校・ひきこもり、などがあります。
何をしても楽しくない、不安を感じる・・・
友達や家族に暴言や暴力をふるってしまう・・・
小学校は楽しく通えていたのに、中学校になって不登校になってしまった・・・
こんな相談で来院された方に、小さいころからの本人の様子をお聞きすると、ADHDでずっと困っていたんだな、と気づくことがあります。
ADHDの症状から始まる、負のスパイラルが回ってしまった結果です。
【負のスパイラル】
多動・衝動性や不注意による不適切な行動
⇒ 怒られる、注意される
⇒ 落ち込む (自己肯定感の低下)
⇒ 荒れる
⇒ さらに行動が悪化する
なんとかこのスパイラルを正のスパイラルに戻すこと、これがADHD診療の肝です。
ADHDの症状は年齢と共に軽減したり、本人の工夫で苦手なところを埋め合わせたりすることができるようになります。
むしろ、いろんなことに興味を持つことや行動力があることが、ポジティブに働くこともあります。
ですので、いかに早く症状に気づき、対応し、結果、本人の失敗を減らして自己肯定感を高め、二次障害を防ぐかが非常に重要です。